以前よりわが国では、恐怖の対象として「地震・雷・火事・親父」という言葉が広く用いられてきました。昔から雷が、恐れられていたことがわかります。しかし、現代においては親父とともに雷もその脅威がやや薄れている感があります。
 落雷によって生じる種々の障害を「雷撃傷」と呼ばれています。雷撃傷の発生件数は、前述の言葉が最も広く使われていた1950〜60年代と比較すると減少しています。しかし、警察白書の発表によると最近でも年間5人程度の死亡者と15人程度の負傷者が発生しています。
 人体に雷が落ちると心肺停止・やけど・意識障害・鼓膜穿孔・神経症状などの多彩な障害が発生します。人体に雷が落ちると雷は、沿面放電という現象を生じ電流の大部分は体の表面を流れることとなります。雷のエネルギーは、一般で利用されている電気による電撃傷よりも非常に高いものですが、沿面放電という現象と通電時間が非常に短いことより体内を流れる電流の影響は比較的少なくなります。落雷を受けた場合には死亡率が高い一方で、生存例の場合は落雷によって生じるやけどは比較的浅い浅達性U度熱傷にとどまることが多く筋肉などの深部組織の損傷を伴わないことがほとんどです。しかし、一部の電流は体内を流れます。落雷による死亡は、多くが心臓に電気が流れることによる心停止による死亡です。したがって、雷撃傷の発生現場で心臓マッサージや人工呼吸などの適切な心肺蘇生法が行われると救命が可能な事があります。
 雷撃傷は、その他のやけどと異なり自然現象による障害であり誰にでも起こり得る障害です。落雷の際には、早期に建物や自動車の中に避難することが重要です。また、木や電柱の近くは、側撃と呼ばれる落雷に遭うことがあります。側撃は、木や電柱などに直接落ちた雷が分岐して近くの人に通電する現象です。特に樹木の近くは危険であり雷雨の際には高い樹木からすぐに離れる必要があります。一方で、電柱や高い建物などの近くでは4m以上離れ、先端を45度以上の角度で見上げる範囲が比較的安全な範囲となります。ただし、この範囲にいても落雷を受けることがあり安全な屋内に避難することが最も重要となります。
 雷撃傷は、やけど以外にも多彩な症状を生じることがあり受傷の際には医療機関での慎重な検査と治療が重要となります。



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